- 「one day」
この世で生を受けし、全ての者達には、いつか必ず終わりの時が来る。
その日が何時になるのか…それを明確に知る術は存在していない。
だけど、もし、その日が世界的に示されてしまっていたのなら、
私達は…その残された時を、どのようにして過ごすのだろう…。
一部の者は、自らの大切な人達と共に。
一部の者は、自らの欲望を満たす為に。
一部の者は、それら全てを捨てて、ただその時を待つ。
…残されたこの短い時の中を……私は一人、さ迷い歩く。
(どうして…どうして貴方は、私を残し……先に逝ってしまったの……?)
決して止む事無く振り落ちる白き涙。
それ等を見つめていると、
まるで、世界が終わることに対して、
空が涙を流しているように感じた。
大地に寝そべり、ただひたすらに天を仰ぐ。
もう少ししたら、この空も黒い闇に蔽いつくされるのだろう。
この白き空の色は、いつも以上に美しい…
これから訪れるであろう情景を思い浮かべると、そんな想いが頭を過ぎる。
最後の時を迎えるのなら、せめて彼との思い出の地で…。
そんな考えを抱き、家を飛び出した時点で、
どうしてこの結末を予想出来なかったんだろう…。
最後の瞬間くらい…大好きな貴方の腕の中で…
最後の瞬間くらい…大好きな貴方との思い出の中で…
眠りたかった。
必死で私に貪りつくそれは、
まるで、同じ人間とは思えぬ形相を浮かべながら、
何度も何度も、私の中で果てていた。
声を上げる気力さえもなくし、
無防備なままに倒れる私の元には、
また、別の者が訪れては、
しばらく同じ行為を繰り返し、
満足げな笑みを浮かべると、私を残し立ち去っていく。
こんな事になるなんてわかっていたら、
最初から家に篭っているべきだったのかもしれない。
けど、ずっと家に居たとしたら、
この空の美しさに気がつくことは出来なかったであろう。
もう、指一本でさえ動かす気力は残っていなかった。
でも、この視線の向こう側に、貴方が待って居てくれるのなら、
この美しい空を見上げながら果てるのも、悪くない…そう思えた。
日も傾き始め、少し肌寒さを感じるようになって来た頃、
白い空を、突然に黒い闇が蔽いつくす。
最後の時が来たのだ。
周囲に居たもの達は、絶望に打ちひしがれ、
聞くに堪えない雄たけびの様な声や、声無き声を上げ、叫び続けていた。
だけど、私の心は不思議と穏やかだった。
……私を残して天へと旅立った貴方が、
やっと、私を迎えに来てくれたんだ…そう感じていたから……。
瞬きする間もないくらいの一瞬の出来事だったけど、
身体全体に感じた貴方のぬくもりに包まれていた時間を、とてもとても長く感じていた。
…身体は忘れてしまっていても、
心が覚えていた貴方のぬくもりで作り上げた偶像を強く抱きしめ、
私は静かに瞳を閉じた。
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