「僕達に翼は無い」





シーン 1

SE:さくさく じりじり みんみん

shu001「…うぅ……こんなに暑かったらカメラのレンズが溶けるんじゃないだろうか…」

SE:じりじり みんみん ざざんざざん

shu002「しかし本当に今日は誰も居ないなぁ…。
    これだけ静かな真夏の海だ何て…ちょっと気持ち悪いや」

SE:さくさく じりじり みんみん ざざんざざん

SE:びゅおー

shu003「うっ…!何だ急にすごい風が…!!」

SE:じりじり みんみん ざざんざざん

shu004「……はぁ、何だか今日はいいモデルも見つかりそうにないし帰ろうかな…」

SE:じりじり みんみん ざざんざざん

shu005「……あれ?麦わら帽子…こんなのさっき落ちてたっけ?」

SE:さくさく じりじり みんみん ざざんざざん

shu006「小さいな…女の子のかな?」

SE:さくさくさく(遠め) じりじり みんみん ざざんざざん

hi007「すいませーん!!それ私の帽子です!」(遠巻き

shu008「そうですか、すごい風でしたからね」

hi009「はぁ…はぁ…そうですね。びっくりしちゃいました」
(そうですね。までは俯きながら。びっくりで顔をあげる)

shu010「はい、これ」

hi011「あ、ごめんなさい。ありがとうございます」

SE:帽子を被る

hi012「えへへ…」(照れくさそうに笑う

hi013「あの、もしかしてカメラマンさんなんですか?」

SE:じりじり みんみん ざざんざざん

shu014「へ?そうだけど…今日は何だかパッとしないから、もう帰ろうかと思ってるんだ」

hi015「あの、突然こんな事言ったらおかしいかもしれませんけど、
    一枚撮ってもらっても良いですか?」(ちょっと遠慮がちに)

shu016「…良いけど何を?」(良いけどの後一瞬貯める)

hi017「海をバックに私を撮って欲しいんです。
    こんな誰も居ない夏の海なんて、滅多に見られないじゃないですか。
    だから、その記念に、今日と言う日を一枚撮っておきたいんです」

shu018「あぁ、それくらいはお安い御用だよ」(爽やかに快活に

hi019「本当ですか!?ありがとうございます!!」(ありがとうで深くお辞儀)

SE:ざざんざざん じゃぶじゃぶ

hi020「じゃあ、この辺りに居ますので一枚お願いします」

shu021「あいよ」(片手をあげる感じ)

SE:さく カチャカチャ カメラを三脚に乗せる

shu022「……あれ?」(軽く目を擦りながら)

shu023「…気のせいか」

hi024「どうかしましたかー?」(少し大きめな声で

shu025「あ…なんでもないよ…!」

shu026「……そりゃそうだよな。今日暑いからきっと幻だよな」(自分に問いかけるように)

shu027「うん、人間の背中に翼なんて…あるわけないさ」(自分に納得させるように)

SE:パシャりんこ

shu028「はい、おっけーだよ」

hi029「ありがとうございました!!」

shu030「写真が出来たら送るよ」

hi031「本当ですか!?」(驚くと言うより嬉しそうに

shu032「うん、君が嫌じゃなければね」

hi033「是非お願いします!」

hi034「あ、何かメモ出来る紙か何かあります?」

SE:ごそごそ ちゃきーん

shu035「じゃあ、この手帳に連絡先書いてもらって良いかな?」

hi036「あ、はい、ちょっと借りますね」

SE:さらさら パタン

hi037「それじゃ、お願いします! 今日は本当にありがとうございました!」

SE:さくさく走り去る

shu038「あ……行っちゃった……まぁ…また会えるし…良いか……」

シーン 1 終了



シーン 2

SE:ぴんぽーん ういーん カツカツカツ

shu039「…えーっと…608号室……あ、ここか」

shu040「…一人部屋か」

SE:ドアを開ける 少しの間 ノックの音

hi041「あ……」(呆然と振り返りながら

shu042「こ、こんにちは」(前回との印象の違いに戸惑いながら

hi043「あ、こんにちは!写真出来たの?」

shu044「…うん。でもまさか病院に持ってくることになるなんて思わなかったよ…」

hi045「あっはは、ごめーん」(極めて明るく

SE:ごそごそ

shu046「はい、これ」

SE:かさかさ

hi047「…へぇー!すごい綺麗!こんなに綺麗に写るもんなんだね!」

shu048「まぁね、一応プロだし。…モデルもかわいい女の子だったから」(全体的に照れくさそうに特に後半は更に

hi049「もー!上手なんだから!」

SE:デュクシ

shu050「はは…」

hi051(へぇーとかほぉーとかきれーとか色々関心の声)

shu052「…なんだったらもっと沢山撮ってこようか?」

hi053「本当に!?良いの?!もっと撮ってきてもらってもいいの!?」

shu054「うん、そんなに喜んでもらえるんだったら何枚でも撮るよ。
    …どうせまだ駆け出しだし、今のところ仕事と呼べる仕事も無くて暇だから…」(後半は少し悲観的

hi055「えー、そうなんだ?こんな綺麗な写真が撮れるのに…。
    みんな見る目が無いんだねー」(いやみっぽくならないように注意

shu056「いや、世界にはもっともっとすごい腕前の人が沢山いるよ。
    僕なんて足元にも及ばないさ」(ここは悲観的にはならないよう注意

hi057「うーん…でも、私は君の写真。凄く好きだよ?」

shu058「そりゃどうも」(淡白に

hi059「本当なのになぁ」(苦笑いを浮かべながら

SE:カタッ

shu060「…その写真は?」

hi061「うん、去年家族で行った海の写真なんだ」

shu062「家族で行ったのに、どうして誰も写ってないの?」

SE:カタッ

hi063「……私の趣味かな?うん、海って見てるだけでも心が安らぐから」
(?までは俯きながら うん、で顔をあげて主人公を見る)

shu064「…変な事聞いたかな?」(気まずそうに

hi065「ううん、なんでもないよ」(物悲しげに)

SE:ハト時計? 7時

shu066「…ごめん、そろそろ帰るよ」

hi067「そっか…。いい写真が撮れたらまたきてね?」(寂しそうに

shu068「うん。…それじゃ」

SE:カツカツ ガチャ バタン

hi069「はぁ……」

シーン 2 終了



シーン 3

hi070「すごーい!星ってカメラで撮るとこんな風に見えるんだね!」

shu071「少しでも良いのを君に見せたくてね。何枚も撮ったその中での一番の力作なんだ」

hi072「ありがとー!本当に嬉しいよ!」

shu073「いや…大した事無いよ……」(目をそらす)

hi074「…元気ないね?」

shu075「そんなことないよ」(慌てて振り返る

hi076「…まぁ、それはそうだよね…君に初めて撮ってもらった時の写真と、
    …半年前と……全然違うもんね、私」(悲観的にならずに

shu077「何も変わってないよ」(出だしは少し貯める)

hi078「あーぁ……自慢だったのになぁー…長い黒髪」

数秒間の沈黙

hi079「でも、治ったらまた伸ばすから。そしたらまた写真撮ってね?」
(きわめて明るく しかし力強くならないよう注意)

shu080「…あぁ」(押し出す感じ)

hi081「あの時の写真、凄く励みになってるんだ。ほら、病は気からって言うでしょ?」

shu082「そうだね」

hi083「……白血病なんて絶対治してみせるから!!」(声を震わせながら)

hi084(ちょっと泣いて)

shu085「僕がついてる…」

hi086「ありがと……」(泣き止む 鼻を啜る音とかあるとリアルかも)

hi087「あのね、私思うんだ。
   人は空を飛ぶことは出来ないよね?
   …鳥と違って翼を持っていないから。
   だけどさ、翼が無くても、人は明日に羽ばたく事が出来るんじゃないかな?」

hi088「…だって、私達は明日も明後日もこれからもずっと生き続けていくんだから…」

hi089「私絶対病気治すから!!だから絶対また写真撮ってね!!」

shu090「…うん、約束するよ」(ここで初めて明るく返事をする)

hi091「絶対!絶対だよ!!」

shu092「あぁ、約束だ」

hi093「嘘ついたらハリセンボン飲ますからね!!」

shu094「…大丈夫だよ、きっと」

hi095「じゃあ指きりしよ!! ……って出来る状況じゃないよね……」

shu096「…約束したよ」

hi097「……うん、約束…」

シーン 3 終了



シーン 4

SE:さくさく みんみん ざぶざぶ

hi098「ねぇー!ちゃんと綺麗に撮ってよー?」(遠くから

shu099「わかってるよー!」(遠くに向けて

SE:みんみん ざぶざぶ

shu100「それじゃ、行くよー…1+1はー?」

hi101「2−!」

SE:カシャ

hi102「相変わらず、凄く綺麗だね。君の写真は」

shu103「モデルがいいからだよ」

hi104「でも、今は世界も認める天才カメラマンだよ?」

shu105「…それは君がいたからだよ」

hi106「でも、私もあの時、君が撮ってくれた写真が無かったら今頃は…」

shu107「…君は自分で言ったじゃないか」

hi108「え…?」

shu109「人は空を飛ぶことは出来ない。
    人は鳥と違って翼を持っていないから。
    だけど、人は翼が無くても、明日に羽ばたく事が出来る。
    だって、私達は明日も明後日もこれからもずっと生き続けていくんだから…ってさ?」

hi110「…そうだね」

shu111「その証拠に、君は生きてるじゃないか」

hi112「でも、今の私は翼を手に入れちゃったから」

shu113「え…?」

hi114「君って言う翼をね!」

シーン 4 終了



シーン 5(BADEND?)

shu115「…ここか……」

SE:ごそごそ

shu116「君と初めて会った時の事、覚えてる?」

shu117「…実は、あの写真がコンクールで最優秀賞を貰ってね」

shu118「今じゃ天才カメラマンの名を欲しいばかりだよ」(苦笑いを浮かべながら

shu119「モデルの女の子の背中に、まるで天使のような白い翼が見えるって…みんな大絶賛さ……」

shu120「ハハハッ……笑えないよな……今頃本物の天使になってるだろうってのに……!!」

hi087「あのね、私思うんだ。
   人は空を飛ぶことは出来ないよね?
   …鳥と違って翼を持っていないから。
   だけどさ、翼が無くても、人は明日に羽ばたく事が出来るんじゃないかな?」

hi088「…だって、私達は明日も明後日もこれからもずっと生き続けていくんだから…」

shu121「…そうだな……君は今もまだ生き続けているよ……
    僕が撮った最初で最後の最高傑作の写真の中で…変わらぬ笑顔のまま……」

shu122「また来る」(立ち上がりながら)

SE:足音段々遠ざかっていく

シーン 5 終了



番号抜けてたらごめんね( ;´・ω・`)

原作には無いBADEND。
これを乗せたいがためにボイスドラマにしたと言っても過言ではない。