「ずっと一緒」



出会った頃からずっと一緒。

一日たりとも離れはしない。

君が居るから僕が居て、僕が居るから君が居る。

いつものように過ごしていれば、目覚めた時には君が居る。

道を外れた事もある。

だから、気づいた事もある。

ずっとずっと一緒だよ。

僕等ずっと一緒だよ。





それから丸2週間が経過した。

ちなみに、僕が改めて登校するようになってからは一週間。

久しい校内をうろうろと歩き回り思い出に浸っていた。

…とは言っても、間の記憶が無い為に、
あまり久しぶりな気はしていないんだけど。

それでも、驚かざるを得ない事は幾つもあった。

いつもの様に教室へと足を踏み入れると、
人数そのものは減っていないのだけれど、
顔ぶれが殆ど入れ違ったかのように変わってしまっていたから。

僕等があの町へと向かってすぐに大量のドミニオンの襲撃に会い、
数千もの生徒達が犠牲になってしまったとか。

その性か馴染みの顔は殆ど見当たらなくて、
まるで新しい学校に転校してきたかのような気分で落ち着かなかった。

だから、僕は休み時間となれば教室を飛び出し、
こうやって無駄に校内探求をするようになってしまっていた。

「…あれ?大樹…」

そんな時、何だか挙動不審で、
キョロキョロと辺りを見回しながらコソコソと歩く大樹の姿が目に入った。

「どしたん?」

「うぎゃああああ!!」

僕が声をかけると、大樹はいつもでは有り得ないほどにでかい声で驚いていた。
普通に声をかけただけの僕が驚いて腰を抜かすのではないかと言うほどに…。
…何にそんなに驚く必要があったのかと、心から思わされる。

「おおおおおお!!脅かすな!!時夜!!」

「……なにをそんなに驚く必要があったんだ?」

だけど、大樹は僕の言葉は殆ど耳に入っていないようだった。

「ひぃぃいぃ!!俺は何も知らない!!!」

…何故だかよくわからないが、
彼は何かに怯えたまま走り去っていくのだった…。

一体全体どうしたのやら、
何だか凄く珍しいものを見たような気がしてたまらなかった。



そして昼休み、僕は大樹が怯えていた原因を知る事になる。

「おばけぇ〜?」

「そうなのよ〜、何か最近そう言う噂が流行っちゃってね〜」

「うううう!!噂じゃない!俺は見たんだ!!」

何でも、この間の大量ドミニオン襲撃騒動以来、
図書室で突然に本が落ちてきたり、
普段12段の階段が13段に増えていたり、
誰も居ないトイレの水が流れたり、
トイレットペーパーが突然にからからと回りだしたり…。

トイレの事が多いのは気のせいだろうか…。

「あー、うちもいっぺん図書室の本は落ちてきたなぁ?」

「そ、そうだろ!?ほら!由紀も幽霊を見てるんだ!!」

いつに無く怯えているのか、随分とでかい声で叫びまくる大樹。
こいつの性格って本当に掴みにくいと心から思う。

「でも、今更何が起きても驚きませんよね?」

ここの学校に着てから色々と有り得ない現象が沢山起きてくれているし…。

「そーそ、俺等みたいな人間が居ること事態がもう超常現象だぜ」

そして、隆二が言っているように、
僕等みたいな奴等が存在して居ること事態が、
すでに非科学的なので、
トイレットペーパーが突然に回りだした程度で驚いてたら、
毎日凄く小さな事にビクビクしながら生きていかないとならない…。

「俺は見たんだーーーーーー!!!!」

だが、大樹の怯えようは尋常ではなかった。
なんであんなに普段クールに振舞ってるくせに、
そこまで幽霊が怖いのだろうか?
僕は逆にそれが疑問でならなかった。

「大樹ちゃん、そんなに幽霊が怖いんだったら、
時夜に幽霊を退治してもらったらいいんじゃないかしら?」

「……なんで僕…」

突然の浩輔のその言葉に、
大樹は目を輝かせて僕を見つめていた…。

「時夜、私も手伝うから頑張ろう♪」

そして……そういう恵は、すごーーーーく!!
楽しそうだったのは言うまでも無い。

「でも、ちょっと面白そうですよね?
なんだったらみんなで行きましょうよ?ね?」

「……俺は絶対行かない…」

ガクガクと震えながら小さくつぶやく大樹。
どうやら彼の気力はもう相当限界に近いようだった。

「あー悪い、俺はパスだ」

そう言うと、隆二は食べ終えた弁当箱を片付け、
足早に屋上から出て行ってしまう。

「……どうしたんだろ?あいつ」

立ち去っていく隆二の背中を…。
別にそこまで名残惜しくも無いが…。
何気なく見つめていると、
僕の視線の先にヒョイっと由紀が姿を現す。

「沙希、悪いけどうちもパスや!
それと、今日はもうふけるから代返宜しくな♪」

それだけ告げると由紀は、隆二の後を追い、
楽しそうにスキップをしながら駆け出していくのだった。

「あ…ちょっと!由紀!!!……もぅ!勝手何だから…」

クラスが違うのにどうやって代返をするのだろうか…。
心から疑問だった。

「あの子達、最近部活もあまり来ないわよねぇ?」

ふと、浩輔が悩ましげに言う。

でも確かに言われてみればそうだった。
人一倍練習熱心な二人なのに、揃いも揃ってここ一週間。
病み上がりの僕でさえ顔を出しているのにも関わらず、
隆二と由紀が顔を出したのは僕が退院してきた日のみだった。

「……怪しいな」

「幽霊騒動より気になるわね?」

互いに向かい合い、にやりと怪しく微笑む僕と浩輔。

「…俺も、そっちの方が凄く気になってきた…」

そして、先ほどまで力尽きかけていた大樹も、
怪しい笑みを浮かべながら僕等の輪の中に侵入してくる。

「時夜さん、浩輔、大樹、貴方達本気で言ってるなら相当やぼったいわね」

「や!?」

「やぼ!?」

「やぼったい!?」

沙希が冷たく言い放った一言に、
僕等は蛙の合唱の如く見事にリズムよく。
各人一言を担当してしまうのであった。

「見たらわかるじゃない…あの二人」

怒るより怖い、その優しい笑みで、
沙希は僕等に異常な威圧感を与えてくれるのだった。

「あ、お昼もそろそろ終わりね」

そう言われて自分の腕時計に目を落とすと、
時刻は丁度お昼休み終了5分前を刺していた。

「ふあぁーあ…お昼からもボチボチやるかぁー」

僕等は皆静々とお弁当を片付けると、
ゆっくり教室へと足を運んでいくのであった。



その日の放課後、
珍しく部活に半分忘れかけていた須藤先生が姿を現した。

「と言う訳で、我々戦隊ヒーロー部をモチーフにした、
特撮ドラマが撮影される事が決まった!!

「また随分いきなりですね…」

「ふふふ、最近我々ガルディアの活躍には目を見張るものがあるだろう?
そこに目をつけた放送部の連中が、
是非今度の放送大会の目玉作品として出展したいとの事なんだ」

「……つまり僕等に見世物になれって事ですか?」

「まぁ、悪く言えばそうなってしまうんだが、
沙希君や浩輔君、それに大樹君も凄くノリノリみたいだぞ?」

先生に言われ彼等三人の方を振り返ってみると、
部室にやってきた時に渡されたドラマPR用のチラシを見て、
燃え上がって彼等の姿が合った。

「先生!!私やります!!」

「あたしもよ!!!是非!!」

「お…俺も…」

……こうなってしまっては僕がなんと言おうと止められそうに無かった。
例えるならデパートでおもちゃが欲しくてすがる子供のように、
彼等は純粋に瞳を輝かせていたから……。

「……はぁ…わかりましたよ。仕方ないから僕もやりますよ」

「おぉ、流石富樫君だ!!それじゃあ、放送部の連中にそう伝えてくる事にしよう」

須藤先生はそう言うとスタコラさっさと走り出していくのだった。

そして、その後すぐに、部室内に歓喜の雄叫びが上がったのは言うまでも無いだろう。



そして、次の日、早速撮影の打ち合わせと、
僕等は放送部に会議室へと呼び出されていた。

「戦隊ヒーロー部の皆さん、初めまして。
僕が放送部部長の【皆本 聖】(みなもと ひじり)です。
皆様の快い返事大変嬉しく思っています」

広い会議室の中、透き通る綺麗な声の人だった。
一瞬僕と言うので男性かと思いきや、
姿も声も立ち居振る舞いも。
どこからどう見ても明らかに女性らしい女性だ。

「さて、今回製作のドラマのお話なのですが、
それは私からではなく、台本担当の者より詳しくお話させて頂きたいと思います」

部長さんがそう言うと、
彼女のすぐ隣に居た男性が静かに立ち上がり一礼をする。

「初めまして、僕は【西条 千鶴】(さいじょう ちづる)と言います。
今回戦隊ヒーロー部の皆様の特撮ドラマの台本を担当させて頂く事になりました。
それに至りまして、まず簡単なドラマの流れを説明させて頂きたいと思います」

…ここから小1時間ほど、彼の説明は続いていった。
まぁ、内容は至ってシンプルで、
突如町に現れた怪人を僕等が倒すと言うものだ。

そして、その時人質にとられたヒロインが、
僕等に助けられた事に感動し報道者になって追いかけてくると。
そう言う展開になるらしい。

「以上になりますけど、皆様質問はありませんか?」

彼がそう言ったので僕は軽くメンバーを一瞥する。
みんな質問どころか、もう今すぐにでも撮影に入りたいと言う顔をしていたのだが…。

「無いようですので、配役の発表にうつらさせて戴きたいと思います」

彼の言葉に待ってました!との声をあげる面々。

「えー、まず主人公ことレッドは富樫さん、ヒロインに沙希さん。
グリーン笹川さん、ブルー天野さん、ピンク由紀さん、ブラック駆動さん。
その他、エクストラ等は我々が固めます」

「ちょっと待てよ!!」

「その配役表凄く気に入らないですね」

「あたし突然にやる気なくしちゃったわ」

「多忙なところ時間割いてやる言うてるのにえらい無駄な気がしてきたわ」

「お前等全員どこに目つけてんだよ」

「……帰るかな」

僕等の態度の豹変に放送部の連中はかなりあせっているようだった。
そりゃ、先ほどまで異常に協力的だったのに、
こんな突然に態度を変えられては誰だってあせるだろうが…。

「あの、皆さん何か気に入りませんでしたか?」

「気に入らないも何も、見ればわかるだろう?」

僕のすぐ隣には、寂しそうにうつむく恵の姿があった。

「僕等は、6人でチームなんじゃない。
7人でチームなんだ」

「1人でもかけるなら」

「誰も居ないのも同じや」

「ボウヤ達にはわからないかもしれないけど」

「それが俺達の魂のつながりよ!!」

「……そう言う事だ」

1人ずつ席を立ち、僕等は会議室から出て行く。
そして最後に僕と恵が出て行こうとしたとき、
部長の聖が、大声で叫んだ。

「待ってください!!台本が気に入らなかったのなら書き換えますから!」

しかし、その見当違いな発言に対して、
僕等はいっせいに一言彼女に告げてやった。

「僕(俺、私、あたし、うち)達のヒロインは恵だ!!!」

そして会議室を後にしていくのであった。




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