「ファナ様と一緒?」




「あ、リードだ〜」

「…やぁ、エリス。君達の部屋も取っておいたよ」

宿につくと、ちょうどリードも来ていて、
準備のいいことにすでに部屋を取っていてくれたようだった。

「リード迷子になってたの?」

「え?あー、いや、ちょっと散歩をね」

「ふーん……」

「あ、はいこれ。部屋の鍵ね」

私とファナが相部屋で、リードとぷりんで一部屋。
何とまぁ準備の良い事か…。

本来ぷりんには一人分のスペースも料金も要らないが、
(実際払ってないんだけどね?)
一応男らしいから男同士が相部屋と言う形になるらしい。

「あ〜、久しぶりのベット〜♪」

私がベットにドカッとダイビングするのを見て、
ファナはクスクスと笑っていた。

「何がそんなにおかしいの?」

「え?アンタ等親子そろってやる事同じだなって」

「そうなんだ…」

今、本当のお母さんが生きてる事がわかって、
会ってみたいって言う気持ちが強くあふれてきている。

でも、私には拾ってくれたお母さんと、育ててくれたおばさんがいて、
事実上お母さんと呼べる人物は二人居る事になる。

…けど、どっちのお母さんの事も人から聞いた程度しか知らない。
顔も知らなければ…声も知らない。

ファナは似てる似てるって結構言ってたけど、
全く未知数の私には想像さえつかなくて。

「ねぇ、ファナ!お風呂行こうよ!」

「…アンタの小さい胸なんて見たくないわよ?」

「…むぅ…違う!!お母さんの話を聞かせて欲しいなって思って…」

「ふーん…」

意味ありげに数回うなずくと、
ファナはゆっくりと私の元へと近寄ってきて、
何故か私の事をベットに押し倒してくる。

「…ちょ…ファナ?」

「アンタ、金持ってないんでしょ?」

「持ってないけど……それが何?」

「話す分のお金、身体で払ってもらおうかなって…」

…冗談でしょ?といいたかったけど、
この時のファナの目はかなりマジだった。
…ファナがまさかそっち系の趣味があるだなんて……。

「覚悟はできてるかしら…?」

「できてませーーーん!!!」

だが、問答無用でファナの顔が私の顔へとゆっくり接近してくる。
…普通なら拒むところなのだが、彼女の美しい顔、甘い香りに惹かれ、
私はそれを受け入れようとしてしまっていた。

だが、次の瞬間!

「お客様、露天風呂のご用意ができました。
もしよろければお入いりになっていかがですか?」

ナイスなタイミングでお店の人がドアを開けてくれた。

「すすす!すいません!邪魔してしまって!」

(邪魔…と言うかむしろ私的にはかなり助かった…。
本当に初キスを奪われる所だったわ……)

と、私は思っていたのだが、
店の人は完全に勘違いして大慌てで走り去っていくのだった。

「露天か…」

ファナは、私を押さえつけていた手を放し、
ゆっくりとベットから立ち上がる。

「エリス。行くわよ」

「どこへ?」

「露天風呂」

「うーん…、まぁ、お風呂にちょうど入りたかったし、露天風呂…か。よし、いこー!」

正直、ファナが何を考えているのかわからなくてちょっと怖かったけど、
久しぶりにきちんとしたお風呂に入れる喜びには変えられなくて、
私はちゃちゃっと準備を整えるとスキップしながらお風呂に向かっていった。




「わ、広い…!さすが温泉!感激ー♪」

私が嬉しくてはしゃいでいると、
後ろからやれやれと言った感じでつぶやくファナの声が聞こえた。

「アンタってほんと、ガキねぇ?」

「嬉しいんだから別にいいでしょー!」

ファナの方へと振り返ると、
湯気の中からゆっくりと浮かんできたシークレットに思わず声があがる。

「うあ…」

「なにが、うあ…よ。人をなんだとおもってんの?」

ファナは、そのまま静かに湯船へとつかる。
……着てても凄いけど……脱いでもファナは凄かった。

「ファナ…」

「ん?」

「本当はいったい何歳…?」

「正真正銘26よ」

「26…」

正直、そう言われても信じられなかった…。
バスタオルの上からでも鼻血物に綺麗な身体だったから。

「…人間って不公平だよ……」

「ん?何か言った?」

「別に……」

そして、そんなファナを見ていたらあふれ出してくる欲求があった。
そこら辺に居るエロ親父じゃないけど、
あまりにも綺麗過ぎて……触ってみたい!!!
と………。

「あわあ…肌もすべすべ…アイスバーンみたい!」

「ア、アイスバーン…?また、訳のわからないことを…」

その美しい肌に思わず伸びていた我が手の平。
一度触れたらもう二度と手を離したくないと思うほどに素敵な感触だった。

…自らのものと比べると……悲しくなる。

「…それにしても、エリス。アンタって全然胸ないわね?」

ファナはいきなり私の胸をぺちぺちと叩いてくる。
セクハラで訴えますよ!?

「う!うるさいわね!ほっといてよ!アンタがでかすぎんのよ!」

「あら?ひがみ…?」

「むきいいーーー!!!」

「あっはは、アンタって本当に変な奴ね。
 ま、そんなところがエフィナによく似てると言えば似てるんだけど」

「母さんか…」

ファナに言われてふと思った。

「母さんの事話してよ」

「え?…そうね。エフィナは…一言で言うなら変な奴ね。アンタと一緒で」

「私と一緒じゃない…むしろ私がが一緒…」

「でも、アンタと違って頭はきれるし、行動力も高いし、
何よりも、彼女の決断力が私達の生死を分けていたと言っても過言ではないわね。
それほどの人よ、エフィナってね…。根性も性格も悪いけど……」

最後の一言を言った時には本当に憎らしそうな顔をしていたファナだったけど、
それ以外の事は、まるで自分の特別な事を話すかの様に嬉しそうに母さんの武勇伝を話し続けてくれた。

「あ〜あ、何でそんな人の娘なのに私はこんなにバカなんだろう……」

「そりゃ、ヴァ…じゃない。父親に似たからでしょう?
それか、アンタが悪いとこばっかり受けついだか」

「むうう……」

返す言葉も見つからない…。
自分の才能の無さにへこむわ……。

「まあ、バカはバカなりに頑張りなさい。
アンタはそのバカなところが良いところでもあるのよ?
誰もがみんな、簡単になれるもんじゃないんだからね」

あんまりほめられてる気がしなかったけど、
きっとファナなりに私を励ましてくれていたんだろう。
うん、普段嫌味を言う顔じゃなくて、凄くやさしい顔だったから。

「うん…頑張るっ!」

「でも、それ以上頭が悪くならないように注意しなさいね?」

…そう言ってファナはニヤニヤとしながら私の頭をぽんぽんと叩く。
これは間違いなく私をからかっている顔だ…。

「むぐぐ…ファナって何でそうやって人の事持ち上げておいて落すかなぁ…」

「アンタの母さんに教わったやり方よ」

「…ファナって、本当に母さんの事尊敬してたんだね〜」

「してたじゃないわ。今も彼女の事は尊敬してる。
人としても、人生の先輩としても、女としても、ね。
たまに突っ走って一人で行動を起こす時はどうかと思ってたけど…。
…って言うか本当にあの性格はどうにかならないのかしら………」

「何だか色々あったんだねぇ…」

「そ、しわの数ほど人生色々ってね」

「ファナの肌なんて下手したら私よりしわ無いじゃん…」

「は?アンタねえ、私は例えで言ってるのよ?
…もうっ本当!バカ!アンタって本当にバカ!正真正銘大バカね」

「うぅ…もうほっといてよーーーー!!!」

……改めて自分自身の頭の悪さと知識の足りなさを実感する私なのだった…。




「う、うーん…。私もグラマーになりたい…むにゃむにゃ…」

「グラマーねえ。また古い表現を使う子だわ。ほら、朝よ。起きなさい」

「むにゃ…?朝?」

さっきまで温泉に居たような気がしたが、
私は何故かいつのまにやらベットで寝ていた。

「アンタ、昨日のぼせたのよ?覚えてない?ここまで運ぶの大変だったんだからね」

「はあ…、覚えてないけど…とりあえず、ありがと…」

「うーん、なんだか気に入らないけど…、まあいいわ」

何だか少し声が遠いなと思い身体を起こしてみると、
ファナの姿が傍には無く、
少しはなれたところにある化粧台に座っていたのが見えた。

「ふあぁ…化粧か…」

私は独り言のつもりでつぶやいたのだが、
聞こえたのかファナがこちらに振り返って、不思議そうな表情でこちらを見ていた。

「ん?アンタ化粧もしたことないの?
……そうね。いいわ。ちょっときてみなさい」

「ほえ?」

「…ほら、ぼーっとしてないでさっさとここに座んなさいよ」

「う?」

「このファナ様が直々にアンタに化粧を施してあげるって言ってるのよ」

「おぉー」

彼女の傍にあった椅子に私が腰かけると、
ファナは慣れた手つきで丁寧にそして手早く私に化粧を施していく。

それから数分後……。

「はい!できたわ。鏡、見てご覧なさい」

ファナは自分の背後にある鏡台を指差す。
私は恐る恐る鏡の中に身体を移動させていき、じっと自分の顔を見た。

「なにこれ…?」

「驚いた?女は化粧一つで変わるのよ?」

「あわわ…」

私はあまりの驚きに、
なぜだかロボットダンスをしてしまっていた。

「ほら。しっかりしなさい!
…にしても、その顔でその服は駄目ね」

そう言うとファナは自分の鞄をあさり始め、
一枚のドレスを引っ張り出してきて私に手渡してくる。

「こっちの服を着てみなさい。
ちょっと地味なドレスだけど、その服よりはましでしょう?」

何だかよくわからなかったけど、
私はファナに言われるままにそのドレスを着てみる。

「あら?以外にかわいいわね。…よっし!そのままあの男達の所に行きましょう」

「あの男達…?」

ファナは私の手をちょっと強引に引っぱり、部屋の外へと飛び出していくのだった。




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